ドドドドドドドドド… 
「ムゥ、この気は…奴か!?」 
みきえは今まで感じた事の無い波動を感じ、全身をこわばらせた。 
すでに人外の域に達し、怖れる者など何もなかったみきえにとって、 
これはいまだかつでない出来事であった。 

ふっと振り返るとすでにそいつはそこにいた。 
12、3歳くらいだろうか。背が小さく、セーラー服を着ている。 
しかしあの凄まじい波動はあとかたもない。本当にこいつから発せられていたのか――― 
「君がみきえ?」 
ふとその幼女が声をかけてきた。 
「あ、ああ…そうだ」 
一瞬躊躇したが、とりあえず答える。 
「じゃあ……死んで」 

究極まで収縮した波動が一気に開放され、吹き飛ばされそうになるのをみきえは紙一重でこらえた。 
「く、やはりこいつから波動が…!!」そうひとりごちる。 
「遅いよ」 

そう小さくつぶやいた奴は、間もなく背後から「ただ」の正拳突きを打ち付けた。 
踏み込みもなく、真っ直ぐに打ち付けられたただの正拳突き。 
しかしその技はみきえの中心を捕らえ、激しいダメージを与えるのに十分だった。 
「がはッ…」 

身長の差もあり、少々上向きに放たれたソレは、みきえの内臓を揺さぶった。 
「ぐ、…何者だ、お前」 
口をゆがめ、搾り出すようにして出したみきえとは反対に、奴は口元に笑みを浮かべ、 
余裕といった感じでこう言った。 
「私は―――みきえだよ」 

「……!?」 
わけがわからない…といった表情をするみきえを無視し、『みきえ』は続ける。 

「私『も』みきえ、って言った方がいいかな」 
「何をバカな……」 
「並行宇宙ってわっかんないかな〜?」 
クスクス笑いながらさらに彼女のおしゃべりは続く。 

「へい…こう…うちゅう…?」 
聞いた事もない言葉だ。確かに格闘技をひたすらに勉強してきたとはいえ――― 
「宇宙はひとつじゃないんだよ。いくつもあって、同じように世界は作られてる。 
 でも、その世界は『こっちの世界』と寸分違わないって事じゃなくてね」 

ベラベラとしゃべりつづける『みきえ』。 
…今しかない、と確信したみきえは、波動を溜めはじめる。 

「ま、格闘バカには言ってもわかんないかもね。 
 とりあえず、『こっちのみきえ』を倒すと、また一歩真の『みきえ』に近づけるんだよ。だから―――」 

「おしゃべりは、そこまでだッ!!」 
みきえは手のひらを地面と水平にし、『みきえ』のいる空間を手刀で薙ぎ払った。 
この速さなら回避する事など出来るはずも無い――― 

しかし手は空を切り裂いたにすぎなかった。いや、性格には彼女のスカートを少し捕らえただけだった。 
ハラリと千切れたスカートの布が地面に落ちる。 
そして、すとっという音とともに彼女の手刀の上に『みきえ』は立った。 

「せっかちな人ね、まあいいわ。データは取れた。今回はここまでね」 
そう言い放つと、その体制のまま『みきえ』はジャンプし、10メートルは離れているであろう地面に降り立った。 
「じゃあ、あなたの命は預けておいてあげる。―――また、会いましょう」 

『みきえ』はそういうと、霧のように姿を消した。 
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