さて、今日は久々に妹のみきえと海だ。何年ぶりだろうか。 
天候も良く、絶好の海水浴日和となったのは普段の俺の行ないがいいおかげだろう。 
「なーにぶつぶつ行ってるかなぁ。もう着替えたの?」 
妹はもうすでに着替えており、少し頬を膨らませ出口に仁王立ちをしていた。 
……って、ここは男の更衣室じゃねえか!! 
「うおぃッ!!バカ!出ろ出ろ!見るな!」 
辛うじて下着を脱ぐ前だった俺は、慌てて手で追い払った。 
「早くしてよねー」そういうとみきえは走り去って行った。 
周りを見渡すと、男どもが口をあんぐり開けて見ている。他の男たちも運よく大事な部分は隠れていたらしい。 
「あいつは、ったく」 
悪態をつき、俺は着替えを急いだ。

「あっつー…」 
雲ひとつない天気のため、鋭い日光が俺の肌を貫く。 
「こんな事なら家でクーラーつけてゴロゴロしとけばよかったかな…」 
思わずこんなことを口走ってしまう。と、突然両のほっぺたがひっぱられる。 
「な、なにすんらおまへ」 
「お・に・い・ちゃ・ん〜?」 
あ、やべ…と思った時すでに遅し、俺のほっぺたは極限までひっぱられた。 
「いててててて!!」 
「こんなかわいいレディーを誘っといて、それはないでしょ〜!!」 
顔は笑ってるが、なんか負のオーラを感じる。マジ怒りのようだ。 
「わ、わりぃ!!わはったはら離せ〜〜〜!!」 
…散々ぶんぶんと上下に振ったのち、どうやら怒りは収まったらしく離してくれた。 
ヒリヒリするよ…うう。 
「お前は加減っちうもの…を………」 

改めてみきえの体を見て、俺は言葉を失ってしまった。 
……なんつーか、すげぇ。そこらの女より数段上。 
「……ん〜?」みきえは何がなにやらわからないと言った表情でこっちを見つめる。 
「…いつのまにそんなのになったんだお前」 
視線を胸に集中すると、さすがに気付いたらしく両手をクロスして隠してしまった。 
「あ、あのねぇ〜っ!!」 
頬を朱に染めるみきえを見て、今日は楽しめそうだな、そんな予感がした。 

…前言撤回。 
子供のようにはしゃぎまわるみきえに対し、俺は泳ぎもそこそこにパラソルで休むことにした。 
これは、俺の体力なくなってるんだろうなあ…すまんな、みきえ。 

みきえは一人で浮き輪で浮かんだり、砂で何かを作っていたが、さすがに間が持たないらしく 
しばらくしたのち俺の隣に座り込んだ。 
「まったく、体力なさすぎだよぉ」 
すんません、同感です。 
「…でも、一緒に来るのが大事だったんだから、いいんだ」 
ぼそっと、そんなことを呟いた。 
「そういえば、最近お前の相手してやってなかったな」正面を向いたまま答える。 
「そうだよ〜。一年ぶりくらい」 
「そんなになるか…まあ、仕事で忙しかったから仕方ないだろ」 
「いつもいつもそういうよね」 
みきえは寂しそうに顔を伏せてしまう。 
「何回も誘ったのにさ。日曜日はず〜〜〜〜っと寝てるし!」 
ず〜〜〜〜っと、に力をこめて言う。 
「わりぃ。どうにも仕事きつくてな」ポンポンと頭を叩く。 
「う〜。ずるいよね」 
「何が?」 
「…なんか、謝られると許しちゃうから」 
「なんでそれがずるいんだ」 
「おにいちゃんだけだよ、こんなに早く許しちゃうのは。なんでかなあ、全く」 
ポンポンと俺の頭をお返しに叩く。…いや、力加減しろよ。微妙に痛い。 
「悪かったよ。月一くらいは遊んでやるから」 
「ホント?」 
ぐいっと体制を変えて、俺の上に半ば乗り上げるような体制になる。 
「あ…ああ、約束だ」 
思わず胸の谷間に目が行きそうになるのを、ぐっとこらえて答える。 
「…大好きッ!!」 

ぐあ。 
―――みきえはそのまま俺に抱きついてきた。柔らかい感触が俺の胸にあたる。 
やばいって。 
「う、嬉しいのはわかったから離れてくれ」 
正直惜しい状況だが、周りからの突き刺さる視線が痛いのでしぶしぶそう言った。 

「…あっ、ごめんっ」 
一気に真っ赤になったみきえは、飛び上がるようにして距離を離す。 
俺の体は半身を失ったかのように脱力した。 
熱を帯び初めていたあれは、名残惜しいかのようにしばらくそのままでいたが、やがて元に戻った。 
「…」 
「…」 
話し掛けるタイミングを失い、俺たちは背中あわせに体育座りになった。 

十数分そうしていただろうか。みきえはすっと立ち上がり、俺に手を差し伸べ、 
「…まだ、時間はあるよ、おにいちゃん」 
俺はそれを掴み、立ち上がった。 
トップに戻るだぅ☆